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2012年12月4日火曜日

M-AUDIO Studiophile CX5

SUB TITLE IMAGE 同じ 5 インチを何台も揃えてしまうあたりに私の苦悩ぶりを露見していますが、要は「もっとミックス作業を楽にしたい!」なのです。
7 インチにサイズアップした方が有利なのも分かってはいるものの、一般的な部屋に住んでいるので音量による近所への配慮からどうしても 5 インチを選択せざるをえません。 そんな 5 インチニアフィールドモニター愛用者である私が気になっていたのが、この春に新発売になった M-AUDIO Studiophile CX5 です。

関連リンク
メーカー :
 M-AUDIO JAPAN
製品 :
 Studiophile CX5
制作時にオケに併せて音を出しながら楽器を弾く事に関しては、ニアフィールドでなくても SR スピーカーやミニコンポのスピーカーで十分なんです。適度な調整された周波数特性で耳に痛い部分は徹底的にカットだし、不快な低域もカットで気持ちよく弾けます。ただし、ミックスはその不快な音を“ミックスによって調整”しなければいけないので、やはり求められるのは記録された原音を忠実に出すことと定位の明瞭さです。

そういうわけで、「お、安いじゃん。試してみるか」的に買った M-AUDIO Studiophile BX5a Deluxe が予想以上に良かったので この春に出たばかりの Studiophile CX5 も入手してみました。

M-AUDIO Studiophile CX5 箱から出してみると最近流行の内部の音の反射を計算して作られたカドを丸くしたラウンドフォルムというやつです。シンセサイザーもその他機器もそうですが私は“まず見た目”です。そういう意味では BX5a と違いメッキ塗装されたロゴではなくなったのと、新しいデザインの筐体は“やる気”を感じる好印象です。

せっかくなので BX5a と並べてみました。ウーハーが別物であることはすぐ分かります。それよりも筐体の大きさが目立ちます。ちなみに YAMAHA MSP5A も BX5a とあまり変わりませんので CX5 は 5 インチでは最大クラスの大きさです。

M-AUDIO Studiophile CX5
周波数特性 50Hz~30kHz (+/- 3dB)
(0 degrees, on tweeter axis)
クロスオーバー周波数 2600Hz
アンプ 50W RMS(Low) 40W RMS(High)
サイズ 305mm(H) 190mm(W) 229mm(D)
重量 8.6Kg

M-AUDIO Studiophile BX5a Deluxe
周波数特性 56Hz~22kHz
クロスオーバー周波数 3000Hz
アンプ 40W(Low) 30W(High)
サイズ 250mm(H) 176mm(W) 200mm(D)
重量 5Kg
M-AUDIO Studiophile CX5
こうやって数字にしてみるとその大きさの違いは分かりやすく、そして、設置する際にすぐ気づくのが重量です。MSP5A( 7.5kg )よりも「ズシッと重たい!」のが第一印象です。BX5a は大音量にすると箱鳴りが出ていたのですが、CX5 はその 8.6Kg という重さによってそういった筐体の共鳴に関するナーバスな部分が扱いやすくなっています。

M-AUDIO Studiophile CX5 低域用のドライバーユニットは並べてみれば一目瞭然で、エンクロージャーのカーブがついた形もそうですが新設計のパーツが使われていることが判ります。BX5a の“驚きの低価格”に感心した理由の一つが“キックやベースの音域的な輪郭の分離感とスピード感”なわけですが、CX5 も同じくケプラー系素材のウーハーとそれを囲む高ダンピング特性のラバー・サラウンド搭載を採用しています。

ケプラー系素材のウーハーは KRK の VXT シリーズでも採用されていますが、小型ニアフィールドモニターとこのケプラー製ドライバーの組み合わせの出音はとても低域が見易いと思っています。背面バスレフに関しては好き々々ですが、個人的には前面バスレフから洩れるツィーターの音が苦手なので、余計な高域を出さない(高域は直線的に反射し低域は回りこむってやつです)背面バスレフはリバーブのかかり具合を確かめやすく気に入っています。

CX5 には“楽曲制作における”リファレンスモニタースピーカーとしての性能に期待して早速セッティングしました。

例によって例のごとくなわけですが、私は単独でその製品をレビューできるほど自分の能力に過信していませんので、4 年間使用し続けた YAMAHA MSP5A と最近 3 ヵ月愛用している M-AUDIO Studiophile BX5a Deluxe との比較を M-AUDIO Studiophile CX5 を中心に書いてみます。
これまたリファレンス CD は私の趣味です。

宇多田ヒカル UTADA HIKARU SINGLE COLLECTION VOL.1
青山テルマ Garden of Love feat.青山テルマ
青山テルマ feat. SoulJa そばにいるね
/04収録 Asience - fast piano Asience - original
Avril Lavigne The Best Damn Thing Hot

M-AUDIO Studiophile CX5 キックなどの低低域
CX5 は BX5a に比べてさらに下の音域をフラットに出せるようになっています。そしてケプラー素材ウーハーは相変わらず音色の輪郭が見やすいです。
エンクロージャーの形状変更の効果か、BX5a の平坦気味に感じた定位感が改良されて定位もしっかり分かりやすくなっています。
そう感じたところで MSP5A に切り替えてみました。さすが前面バスレフ 2 ポートという感じで下の低域の音量だけは出ています。ただし今回ばかりは分が悪いというか MSP5A は BX5a との比較だと音量的な好みで選択できる範囲だったのですが CX5 とだと“何がどういうふうに鳴っている”にプラスして音量バランス的にも CX5 の方が良い出来だと思います。

ベースなどの低域
これはキックなどの音との“からみ具合い”も含めてとなりますが、MSP5A は前面バスレフで“音量は出せるけれどもボヤケた感じのキック”のおかげでベースがしっかり聴こえる感じです。BX5a は定位感は良いのだけれどもキックが弱くてベースが聴こえすぎる傾向。今度はさっきと逆の試聴順で最後に CX5 に切り替えてみましたが、無理矢理感無く良く出ている低域と表現するのが良いでしょうか。BX5a のネガな部分をリファインしているのがよく分かります。

リフギターやピアノなどの中域
このあたりにくると特に“良し悪し”ではなく“サウンドキャラクターの好み”で選んで良いと思うのですが、CX5、MSP5A ともに定位感は良好です。どちらも良いモニタースピーカーだなぁと感じます。この 2 機種と比べると BX5a は音の粒立ち感が粗く感じます。

女性 Vo. やピアノ高音部などの中高域
BX5a のときもそうでしたが、CX5 でも採用されたケプラー系素材のドライバーとシルクドームツィーターの組み合わせは、私が最も気に入っているところです。女性 Vo. に関しては定位も解像度も抜群に CX5 は素晴らしいと思います。“歌物”ってボーカルを中心にミックスするというのは当たり前ですがとにかく見やすいのです。
MSP5A はこのあたりからツィーターに併せて前面のバスレフ穴からもれる高域が気になるというか定位を甘くしているのが残念。MSP5A の話になりますが、内部的な吸音材か仕切りの工夫でその高域のバスレフ漏れは修正できるとは思いますが、さすがにそれはバランスを崩すのでやる気になりません。

M-AUDIO Studiophile CX5 ハイハットやシンバルなどの高域
いわゆる“ツィーターのお仕事”です。これは仕様書を見る限りは BX5a と MSP5A が 1 インチ(およそ 2.4~2.5cm )で、CX5 が 1.25 インチと少し大きめです。3 者ともシルクドームツィーターというのは最近はどこのニアフィールドモニターもシルクドーム採用ですのでリファレンスどおりといったところです。実際に聞くと CX5 はとにかく BX5a とは違う製品ということを認識できます。CX5 はとにかく歪みが無くクリア。MSP5A と BX5a では“どっちつかず”で価格というコストパフォーマンスで BX5a には“びっくりした!”ってヤツですが、CX5 の高域はハイハットにかける EQ とコンプやシンバルにかけるリバーブが分かりやすいです。

さらに上の高高域
10KHz 付近のディエッサーやリバーブのハイパスフィルターを、どうしようかと迷うあたりの音域のミックスは難しくてそこが自分なりの悩みなわけですが、この 3 つを分けるとしたら CX5、MSP5A と BX5a という感じです。CX5 と MSP5A は両方とも定位感が良好で音のキャラクターは違いますがどちらも良い感じです。IR リバーブの残り具合がどちらが良いかなと数回 CX5 と MSP5A を切り替えてみましたが CX5 の方がクリアに聴こえます。MSP5A は CX5 より時間的に長く聴こえるのですがそれは実際には前面バスレフからのエコーっぽい成分でバスレフを塞ぐとリバーブの残響のかかり具合は両者同じ感じに聴こえます。

全体的な感想と追記として、BX5a は“驚きのコストパフォーマンス”なわけですが、残念なのは Low と High の± 1~2db 程度の調整用 EQ が付いていないことでした。CX5 には低周波カットオフ、中域、高域、アコースティック・スペースと、4 つの環境に合わせるための EQ (←少し表現が変です)が付いています。これは都心の鉄筋コンクリートマンションと田舎の木造和室の2箇所に拠点を置いている自分にとってはとても重宝します。
M-AUDIO Studiophile CX5
この調節機能が付いていること自体が搭載されているバイアンプが従来製品とは違うものであることを示していますが、この CX5 のバイアンプも全体的な印象としてある程度の音量を出しても歪みを感じない良い製品だと思います。
順序を適当に切り替えて CD を聴いている感じでは MSP5A と BX5a は 5 インチにありがちなドンシャリタイプですが、CX5 は本気でベタ褒めしたくなる中域も豊かな“本当に 5 インチか?”と思える音質です。

いわゆる“メインストリーム路線”に今までのノウハウ+全くの新製品として出てきた M-AUDIO Studiophile CX5 ですが、その他メーカーにも多く見られる最近の新製品の特徴である音の反射解析とやらと計算したラウンドフォルム形状のエンクロージャーを持つ製品と、その移行を行っていない製品との差が出た試聴比較となりました。
BX5a と MSP5A の比較だったら“そのお釣りで焼肉が食える”という脱線気味な感想でしたが、CX5 と MSP5A を比較すれば、CX5 は低域の定位感と中域の解像度の高さから鳴っている楽器のキャラクターがとても掴みやすいです。

あぁ、こんなにスピーカーに囲まれていったい私は何をしているんだろう・・・という煩悩はさておき、8 インチクラスのニアフィールドモニタースピーカーを設置できる部屋に引っ越すまでは CX5 を満足して使い続けていくことができそうです。

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