■ Digital Monotone の
   トップページはコチラです。
   →Digital Monotone

2012年12月5日水曜日

TL Audio ebony A2

SUB TITLE IMAGE アウトボードはもう必要ないかなぁとこの数年はソフト移行を進めていましたが、個別トラックに使うエフェクターは何とかなっても、録音するときや、まとめたトラックを通すプリアンプの“あの感じ”だけはプラグインソフトではしっくりいかないことに気づき、昨今のDAW / DTMの唯一の弱点っぽい“質感”を作るために再度プリアンプを集め始めました。

TL Audio Ebony A2(日本代理店:MI7)の紹介の記事なのですが、その真空管サチュレーションっぷりを比較する記事でもあるので久々に長文となっています。

関連リンク
メーカー :
 TL Audio
代理店 :
 MI7 Japan | エムアイセブン・ジャパン
製品ページ :
 Ebony A2
どうしてあのCDみたいな音にならないんだろう!
もちろんメロディとアレンジあってこその楽曲なわけですが、やっぱり、作るからにはそうあってほしいといつも思っています。

随分前にハードウェアのエフェクターは全て手放し、プラグインエフェクターを使ったパソコン内完結のいわゆるDTM / DAWに移行し、オーディオインターフェイスもPCと親和性が高いFirewireオーディオインターフェイスを使用していたのですが、ここ数年はあえてアナログミキサーにサウンドを通しなおして録音していました。

もちろん、最近のアナログミキサーの高品質化(高音質は別問題)でダイナミックレンジは広いしフロアノイズも格段に低いということもありますが、やっぱり一度マイクプリとプリアンプを通したほうがミックスでのEQやコンプ、リバーブのノリがイイんです。

音は大して変わらないのに、何というか余計な超低域や超高域が押さえられ“ギュっ”じゃなくて“キュっ”程度ですが詰まった音になると言えばいいのでしょうか。
TL Audio Ebony A2
それを一度体感すると、その再現のためにパソコン内のプラグインであーのこーのとやるのは馬鹿らしく思えます。マイクプリとプリアンプって本当にただ通すだけなんです。

そして色々と調べていくうちに、手が届かない価格の某機種たちがECC83という真空管を使っていることが分かってきました。
真空管についてはあまり詳しくないのですが12AX7という管の一つのモデルです。エントリーモデルのマイクプリなどでも12AX7は使われているのですが、後ろの型番が不明なボチボチ品質なものも多いようです。
真空管はその後ろの型番が重要らしく、ECC82とECC83がどうやら素敵らしいということが分かってきました。

TL Audio Ebony A2 てなわけで、ひたすら2チャンネルタイプ(主に2ミックスで使うため)のプリアンプでECC82かECC83搭載機種をひたすらマニュアルを斜め読みしながら探して、最終的にはお小遣いで買える(笑)ということでTL Audio Ebony A2(日本代理店 MI7:http://www.mi7.co.jp/)を購入してみました。

実機を確認したかったのですが、新しい機種だし、なかなか地方では見ることはできませんでした。そこで、MI7さんに電凸して、中の真空管の確認と、真空管は消耗品ですのでその後のサポート体制を確認して、後は耳を信じている友人に実機を確認してもらい、もうそのECC83搭載に心奪われて我が家に導入です。

TL Audio Ebony A2 ちなみに、真空管は消耗品です。細かい事は省きますが熱やら電気やらでボチボチと真空管が変質します。
ただしそれは味にもなるので一概に良し悪しは言えないのですが、スタジオ品か個人品かも分からない中古は怖いなと思い、サポートもしっかりしてそうなので新品導入となりました。
こんな“あんたどこの人!?”な人間に丁寧に、しかも仕様書を本国に問い合わせてくれたMI7のS様、ありがとうございました。

そういう経緯で我が家に来たEbony A2ですが、TL AUDIOは超有名なNeveやTridentの修理やモジュールを販売していたエンジニアとNeveの元主任設計士が立ち上げ、現在では高級機から普及機まで真空管を中心と したエフェクター / アウトボードを制作・販売している会社です。。
このEbonyシリーズは比較的新しく、スタジオクオリティをデジタルアウトなどの過度なパーツをオプション扱いにして手が届きやすい価格でリリースしたものみたいです。
MI7 TL AUDIO ラインナップ
MI7 TL AUDIO ラインナップのページ:http://www.mi7.co.jp/products/tlaudio/

その他にも、元々の購入動機である“サミングアンプ”“サチュレーター”機能そのもののA4などもあるのですが、さすがに16チャンネルは要らないし、A2は良く見るとコンプとEQのON/OFFはもちろん、真空管もON/OFFできて、ディスクリート・クラスAアンプ(いわゆるFET)とまとめたリズムトラックやステレオ2mixを通すにはこちらの方が便利そうだなぁということでA2に決定しました。

TL Audio Ebony A2の真空管プリアンプに通す さっそく趣味な暇人全開です。
オーバーヘッド、シンバル、ハイハット、タムセット、スネア、キックの個別トラックを一つずつEbony A2を通して、せっかくだからとひたすら真空管のゲインを変えながら、1トラックずつ録音してみました。

ドラムネタはAddictive Drumsです。これのPro Tools 8のパソコン内でバウンス(書き出し)したものと、Ebony A2の真空管スイッチONで0ゲインと+3ゲインのものを全て録音して、それぞれを単純にステレオ2ミックスで書き出してみました。
Pro Tools 8からのD/Aはdbx QUANTUMでINはDelta AP192です。

※微妙な差だけど質感は違うのでmp3でここに貼り付けるのは止めました。興味がある方は下のファイルをダウンロードしてください。それぞれに分かりやすいファイル名にしています。(44.1KHz / 16bit /wav)

2010年6月29日にMicrosoft Security Essentialsでウィルスチエック済
http://edins-design.com/Hiro/music/Drumset_A2Tube.zip 19.9 MB

Pro Tools 8 改めてアウトボードのマイクプリを通すっていいなって思います。
PC内だと各サンプルが当たり前ですがそのままなんですよね。
すごく下からすごく上までよく分からない音が鳴っているというか。
そういう音を見えない空気の中を通す感じというか当たり前の普通の音に戻してくれます。

ゲイン0dbの方は聞き取りにくくても+5dbの方は決して音痩せしているわけでも過大に低域を膨らませたりするわけでもなく聴きやすい音にしてくれています。

真空管ってなんとなく低域ズンズンで高域モコモコなまるでアナログフィルターを通した音をイメージしがちですが、プリアンプは“どれだけ原音に忠実に録音できるか”な機械ですので、このEbony A2もPC内完結させたミックスと聞き比べてもらえば分かるとおり、変な色づけはありません。
TL Audio Ebony A2 ちなみに、Ebony A2にはステレオ・サウンド・プロセッサーということでEQとコンプが搭載されています。

使ってみたのですが、コンプはLA-3Aぽくもあるような1176ぽくもあるようなですが、色づけが少ないFETタイプのコンプで20:1も備えているので“かけ録り”のリミッター的な使い方も出来ます。
ハイハットとキックでそれを試してみましたが、3db程度のヘッドを均すのに良い感じでした。
EQも変に歪む感じではなくQは広めなので細かい事はできなさそうですが、“普通に上げ下げ”でした。

普段は単一アイテムの紹介なのでこの辺で終わりな予定なのですが、サチュレーションっぷりを確かめないと買った当人にしてもドキドキなのです(笑)
TL Audio Ebony A2
今回、このTL Audio Ebony A2を選んだ最大の目的が、カチンコチンで耳障りな音を出してしまいがちなDTM / DAWのパソコン内完結の音を素敵(決して音が綺麗になるエフェクターではありません!)にしたい!てのが目的ですので、その本物の真空管って通すとどうなるんだい?的なところを自分なりに検証してみました。

TUBE-TECH SSA2A 今回比較に用いたのは、サミングアンプとして名高いTUBE-TECH SSA2Aです。
価格差を考えるとかなりEbony A2が不利な感じがしましたが、その値段の差は確かに色んな理由であるとは思いますが、同じエフェクターという観点で見たら、音が良いかどうかが本質なので、どうせなら最高峰と呼ばれる機種と比べてみる事にしました。

1. SSA2Aは純粋に真空管サチュレーションだけのアウトボードですので、Ebony A2も真空管だけONにしてEQとコンプはOFF(スイッチ)にしました。
2. SSA2Aはゲインを上げると音量も上がるので+5dbのサンプルはPro Tools 8のマスターフェーダーで-5dbしました。

※微妙な差だけど質感は違うのでmp3でここに貼り付けるのは止めました。興味がある方は下のファイルをダウンロードしてください。それぞれに分かりやすいファイル名にしています。(44.1KHz / 16bit /wav)
2010年6月29日にMicrosoft Security Essentialsでウィルスチエック済
http://edins-design.com/Hiro/music/ebonyA2_SSA2A_Saturation.zip 25.8 MB

サイン波でTL Audio Ebony A2とTUBE-TECH SSA2Aのサチュレーションを比較する サンプルはサチュレーション具合を目で確認するためのいつもの1KHzサイン波と、音質変化はリズムやミックスでその変化を確認するのは困難だといつも思っていますのでホワイトノイズです。
ホワイトノイズって意外と微妙な“質感やその感じ”の変化を確認しやすいのです。

サイン波を見て思ったのがSSA2Aって意外と高域の倍音付加は少ないようです。これは画像はゲイン+0dbですが、サンプルには+5dbも入れていますので確認してもらえば分かります。それよりも95Hzあたりにポコっと持ち上げがあります。

対してEbony A2ですが、T-RackS Clipperを始め多くのサチュレータープラグインで見られる感じの倍音付加で、これならプラグインでいいじゃない?と思われそうですが、実は上のSSA2Aも同様で本物の真空管は周波数帯でこれまた動きが違うのですがこの“倍音持ち上げ”が“脈を打つ”んです。
全部が同期して一緒にではなく、低域や高域によって動きの間隔が違うし、試しに440Hzや3KHzのサイン波で試すとこれも動きが違うといった具合です。
そのあたりはサンプルをアナライザで確認してもらえば分かります。
これが、実機とプラグインの決定的な差だなぁと思いながらホワイトノイズを比べてみます。

オリジナル(パソコン内で全部処理)ってやっぱり耳が痛いというかホワイトノイズは全周波数で均等に鳴るようにノイズを出しているから当たり前なのですが、Ebony A2もSSA2Aもホント微妙にかなり高い部分での高域を丸めてくれます。

ホワイトノイズでTL Audio Ebony A2とTUBE-TECH SSA2Aの音質変化を比較する border= 超低域の部分も丸めは入っているのですが持ち上げがあるみたいです。これもサイン波で書きましたが脈打ってます(笑)
そこがEQやプラグインで同様のカーブを描いてもそうはならない部分なんだなぁと今回改めて思いました。

真空管に限らず、このアウトボードを使ったサチュレーション効果というのは下手すると“それを買ったことに対しての、そうであってほしい思い込み”になるのかもしれません。
ですが、上記のリズムトラックの部分で触れたとおり、個別トラックをこういう質感を与える機械に通してそれが20も30も重なるとハッキリと違った音になります。

最後に、ボーカル録音でも使ってみました。
DAW完結音源とマイクプリを通した音の差を知っていたので驚きはしませんでしたが、素直で原音に忠実な良いマイクプリ+プリアンプでした。
ソフトシンセの音を外に出してA2を通して録音することは手間に思いがちですが、ルーティングはPro Toolsでやるのでクリックが2回(IN-OUTを選択)増えただけで苦にはなりません。

もちろんダメな音に変化させるのは論外ですが、今回手に入れたTL Audio Ebony A2はとても原音に忠実で、“質感”というある意味オマジナイ的なものを付与してくれる素敵なエフェクターとなりそうです。

0 件のコメント:

コメントを投稿